界面活性剤メーカーがヘアケア化粧品を開発する理由とは?その研究の流儀に迫る

界面活性剤メーカーがヘアケア化粧品を開発する理由とは?その研究の流儀に迫るの写真

デミ コスメティクスのもの作りは徹底した自社での研究開発に支えられ、常に進化を繰り返してまいりました。商品研究開発の根底にはどんな流儀があるのでしょうか?
長年にわたり研究分野でデミをリードしてきたデミ コスメティクスカンパニー バイスプレジデント兼化粧品製造部長の坪川 恒一郎に詳しく話を聞きました。

話を聞いたのは

坪川 恒一郎

坪川 恒一郎

執行役員
化粧品部門 デミ コスメティクスカンパニー
バイスプレジデント 兼 化粧品製造部長

デミは1941年に創業の日本繊維加工のリーディングカンパニー日華化学の化粧品部門として誕生

坪川氏インタビュー画像

――日華化学が創業から向き合ってきた繊維加工とはどんなものですか?

坪川:1941年、日華化学はアミノ酸を製造加工する会社としてスタートしました。
主力は繊維加工の薬剤で、繊維加工薬剤では日本のトップシェアを誇っております。
繊維加工というものは、きれいに汚れを洗って落とす「精練」、黄ばみなどを落とす「漂白」、そしてきれいにしたものに対して色を付ける「染色」、そして、「ソーピング」といって余分な染料を落とし、「フィックス」といってその染めた色が落ちにくくするという工程を踏みます。

最終的に、「機能加工」といって、水をはじく撥水加工や、カーテンなどであれば防炎加工、あるいは静電気を起きにくくする帯電加工であったり、シルキータッチを求められるようなものであれば手触りを良くする表面加工を施します。

――普段何気なく使っている繊維商品にも、いくつもの工程が必要なんですね。

坪川:はい、日華化学はこれらで使われる工程薬剤すべてを開発してきた会社です。
これらの技術を元にして、創業から20年後に、「繊維を洗う・漂白する」という技術を生かして、新たにクリーニング事業を展開したのです。

――これらの薬剤とは、どのようなものなのですか?

坪川:界面活性剤です。洗剤に使われているものといったらイメージしやすいかもしれませんね。
2つの物質の界面(境界)に作用して、本来混ざり合わないもの同士を、混ざるようにしてくれます。

石けん・シャンプーなどの洗浄剤もそうですが、車のカーシートを燃えにくくするための難燃剤、タオルの雑菌の増殖を防ぐ抗菌剤、新聞紙の脱墨剤(※)に至るまで、実は身の周りのありとあらゆるところに使われているんです。見えづらいと思いますが、裏方でお客様の生活を支えています。

※脱墨剤=古紙からインクを取り除くために使用される薬剤

毛髪科学研究で生きる”繊維加工で培った長年の技術”

――その後、化粧品事業であるデミ コスメティクスが誕生しましたね。どうして、繊維から髪に応用しようと思ったのですか?

坪川:1981年に化粧品の事業が立ち上がりました。
知っていましたか?繊維である羊毛というのは、まさに髪の毛と同じような構造をしているんですよ。
羊毛にもキューティクルがあるし、コルテックス(※)も存在しているのです。

そういう中で、今まで培ってきた繊維加工の薬剤のノウハウを化粧品にも応用できると考えたのです。
繊維加工の工程は、髪を美しくしていく工程と同じなんですよ。

※コルテックス=髪の90%を占める、髪の内部を形づくる組織

――羊毛が髪の毛と同じような構造だったとは驚きです!はじめて開発された製品は何だったのですか?

坪川:フランスのバレンタイン・モレル博士が開発した天然複合アミノ酸(L・P・P)という原料に出会いました。これはコラーゲンを元につくられており、皮膚の治療にも使われているということで、傷んだ毛髪への機能性素材としても良いのではないかと基礎研究を始めました。
研究の結果、毛髪内部のコルテックスに存在するタンパク質と非常に似た性質を持っていて、髪のダメージケアができるということで、1982年シャンプー・トリートメントを中心としたヘアケアからデビューいたしました。

毛髪を科学する、デミ毛髪科学研究所とは

毛髪科学研究所の写真

――研究の流儀を教えてください。

坪川お客様の髪の美しさと健康ということを一番重要視しています。研究開発においても、髪のダメージを最小限に抑えるということへのこだわりというのは非常に強いです。

そのために、ひとつひとつの素材を非常に吟味して、研究し、評価していく地道な取り組みが必須ですね。シャンプーをとっても、「洗う」ための成分、元になる界面活性剤はたくさんあります。その中で、安全性の高さにこだわり、使用する素材を決めています。これには、お肌や頭皮に対して良い洗浄成分を選びたい、という考えがベースにあります。
毛髪、科学、皮膚科学のエビデンスをしっかりと取って、それに基づいた商品開発をしているという強みが我々にはあります。結果多くの美容師の皆様からの信頼をいただけると考えております。

――普段の研究の裏側にはどんな取り組みがあるのですか?

坪川一概に髪のダメージケアをしたい!と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、我々は、毛髪の構造解析から始まって、まずはダメージの過程の解明をします。パーマとカラーをとっても、ダメージの機構が違うんですよ。

たとえば、カラー由来のダメージであれば、ブリーチすることでメラニンが破壊されて空洞ができていきますし、アルカリカラー剤でキューティクルが剥離したり、毛髪の接合部分のCMCが破壊されたりという科学的な毛髪ダメージがありますね。
そのプロセスやダメージの部位をきちんと知ったうえで、いかに補修していくのか、そもそもダメージをいかに抑えられる剤を作れるかという基礎研究と商品開発、処方開発の両面からアプローチをしているんですよ。

各研究テーマによって解決するべき課題が違ってくるので、日夜研究を続けています。

坪川氏インタビュー画像

――いま取り組んでいる新たなチャレンジはありますか?

坪川髪や頭皮への基礎研究にさらに力を注いでいます。
特に天然物・生物学的な機能性を天然由来成分から見つけ出してヘアケアに応用しています。
毛髪はとても微細な構造をしているのですが、それらがどこにどう効いているのか構造を分析して、毛髪特性の探求を進めています。

また、この少子高齢化の時代のなかで、年齢を重ねても健康な髪であり続けていただくことは、いまやるべき課題であると取り組んでおります。
健康な髪があってこそ、ヘアデザインを楽しんでいただけますよね。

――長年の研究の先に、進化し続ける商品づくりがあるのですね。自社で研究を行うメリットは何ですか?

坪川自社で研究開発をすることで得られる研究成果やノウハウが蓄積され、いろんな発見がありながら、次の商品に展開できる。それが、一番のメリットですね。

我々のブランドでいえば、フローディアというのはもう長年の主力ブランドですが、進化を続けながら変わってきています。リニューアルと共に機能をさらに上げていくことを繰り返していっています。
我々の手で研究開発し、我々の手でものをしっかり作って、高い品質のものをお届けするということが、メーカーとしての使命だと思っています。

――日華化学のデミ コスメティクスだからこそできるもの作りとは何ですか?

坪川化粧品業界の中で、化粧品単一の会社じゃないところというのは、日本でも世界を見ても本当に少ないですね。

日華化学では化粧品のほかに化学品も研究開発していますが、一緒に研究開発を進める中で独自の素材を自らが開発できる利点があるんですよ。たとえば、ヘアケアで使われているような乳化剤であったりとか、原料であっても自社開発ができています。
今後新たな技術として生み出すものであっても、本来ならば原料メーカーから仕入れる必要があるものも、独自に開発できる。広い事業展開のおかげで、化粧品業界だけでは考えもつかないような技術が生み出される可能性が非常に高いと思います。このメリットは大きいと思います。

――フローディアモアのヘアマスクでも化学品の撥水加工技術が採用されていますね。

坪川:こちらも当社のオープンイノベーションの取り組みの成果です。ダメージした髪の撥水機能の再現をテーマにしたとき着目したのが、「日華化学独自の繊維撥水加工技術」でした。

まとめ

デミ コスメティクスの歴史、繊維加工技術の応用、毛髪科学研究所の取り組み、そして自社での研究開発のメリットについて坪川に詳しく聞きました。
愛され、信頼いただける商品開発の裏側には、裏付けされた科学と向き合う姿勢がありました。

ランキング

DEMI LABO

毛髪科学のプロがお届けするヘアケア情報マガジン

Good Science,Good Beauty
科学のチカラであなたらしい理想の髪を

毛髪研究40年の歴史をもつDEMI COSMETICS(デミ コスメティクス)が運営する
髪や頭皮にまつわる美容情報サイトです。

1/100000。
1人およそ10万本あるといわれる髪。

たった1本の髪も余すことなく、ひとりひとりの髪と頭皮のパフォーマンスを最大限に引き出すためのヒントをお届けします。