髪と亜鉛の関係性は?亜鉛を含む食品例や摂取時の注意点も紹介

健康的な髪の維持には、亜鉛が重要とされています。しかし、亜鉛が髪に与える影響について、あまり知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、髪と亜鉛の関係性や摂取時のポイントを解説します。
目次
そもそも亜鉛とは?

亜鉛はミネラルのひとつで、人間の身体を健康に保つために必要不可欠な栄養素です。体内では骨格筋や骨、皮膚などの組織や、肝臓や腎臓、脳などの臓器に分布しています。
成人では、体内に2g程度の亜鉛が存在するとされており、はたらきとしてはタンパク質の合成、皮膚や髪の毛の新陳代謝の活性化、味覚を左右する味蕾(みらい)の形成維持などです。亜鉛には抗酸化作用や免疫力の向上といった効果も期待できます。
亜鉛は健康的に生きるために大切な栄養素ですが、実は体内で合成できません。そのため、亜鉛が不足しないように、日々の食事から摂取することが必要です。
食物から摂取した亜鉛は腸で吸収されますが、吸収率は30%程度とされています。食べた分がそのまま吸収されるわけではないので注意が必要です。ただし、栄養バランスの良い食事を続けていれば、亜鉛不足に陥る心配はほとんどないとされています。
一方で、偏食や過度なダイエットなどが原因で亜鉛不足になると、味覚障害や食欲不振、皮膚炎などの症状が起きることもあります。亜鉛不足によって身体機能が低下すれば、当然髪にも影響が出てしまうので、亜鉛が不足しないように注意しましょう。
健康な髪を保つのに亜鉛が重要な理由

亜鉛にはさまざまなはたらきがありますが、髪に関わるはたらきにはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、健康な髪を保つのに亜鉛が必要な理由を解説します。
髪を構成する手助けをするため
亜鉛は髪の主成分、ケラチンの合成に深く関わっています。
そもそも、髪の約80~90%はタンパク質でできており、その大半を占めるのがケラチンとされています。タンパク質はアミノ酸から構成されますが、ケラチンはシスチンをはじめとする18種類のアミノ酸からつくられるタンパク質です。
シスチンは体内では合成できず、食事から摂取する必要がある「必須アミノ酸」のメチオニンから合成されます。
アミノ酸は単独で生合成ができないため、必須アミノ酸を摂取しただけでタンパク質に変わるわけではありません。生合成に必要な栄養素のひとつが亜鉛であり、亜鉛のサポートがなければ必要なタンパク質がつくられないということです。
何らかの理由で亜鉛不足になると、必須アミノ酸をしっかり摂取していたとしても、髪に必要なケラチンの合成ができません。結果として、髪の質が落ちてしまうことも考えられます。
ヘアサイクルを整えるため
亜鉛には毛髪の生成を助けるはたらきが期待できます。
ヘアサイクルは「成長期」「退行期」「休止期」の3つの周期で構成されています。サイクルがしっかり整っていれば、髪全体の約90%が成長期になっている状態が続き、ある程度の毛量をキープし続けられるようになっています。
ストレスなどが原因でヘアサイクルが乱れて成長期が短くなると、成熟しきっていない髪までもが抜け落ちてしまいます。亜鉛を十分に摂取しておくことで、毛髪のケラチンを生成する働きを助け、抜け毛の増加を防げる可能性があるのです。
AGAの進行を抑制するため
亜鉛にはAGAの進行を抑える効果も期待できます。
AGAとは男性型脱毛症のことです。AGAは男性ホルモンである「テストステロン」が体内の還元酵素「5α-リダクターゼ」のはたらきで「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変化することが原因とされています。
DHTが男性ホルモン受容体である「アンドロゲンレセプター」と結合してしまうと、発毛が阻害されることがわかっています。具体的には、通常3年~5年あるはずの髪の成長期が短縮されてしまい、健康的な髪が育ちにくくなってしまうのです。
亜鉛は還元酵素である5α-リダクターゼのはたらきを抑える作用があるという研究結果も報告されており、AGA治療においても亜鉛が注目されています。
亜鉛を含む食品の例
亜鉛を多く含む食品は、下記のようなものが代表的です。
牛肩ロース(赤肉・生) | 5.6mg |
豚レバー | 6.9mg |
牡蠣(養殖・生) | 14mg |
するめ(加工品) | 5.4mg |
タラバガニ(水煮缶詰) | 6.3mg |
ナチュラルチーズ(パルメザン) | 7.3mg |
ごま(いり) | 5.9mg |
ココア(ピュアココア) | 7.0mg |
アーモンド(いり・無塩) | 3.7mg |
※すべて可食部100gあたりの含有量
参考:文部科学省「食品成分データベース」
亜鉛は「必須微量ミネラル」ともいえる栄養素なので、通常の食生活を送っていれば過剰摂取することはほぼありません。しかし、裏を返せば、意識して摂取しないと不足しやすいということです。
そのため、いかに吸収率を上げて効果的に体内へ取り入れるかが重要といえます。
亜鉛の吸収率は約30%ですが、亜鉛を摂取した量や、一緒に食べるものの栄養素によって吸収率は変わります。なかでも、レモンやオレンジといった柑橘類に含まれるクエン酸やビタミンCは亜鉛の吸収を促進する効果があるとされているので、一緒に食べると効率的です。
亜鉛やクエン酸などを日常的に摂るのが難しい場合は、ドラッグストアなどで販売されているサプリメントを利用するのも良いでしょう。
亜鉛を摂取する際に気を付けたいこと

亜鉛は髪の健康のために積極的に摂取したい栄養素ですが、注意したい点もいくつかあります。
ここでは、亜鉛を摂取する際に気を付けたいことを解説します。
亜鉛の吸収を妨げる食品もある
上記のように亜鉛の吸収率を高める食品もありますが、一方で吸収を妨げる食品もあるので注意が必要です。
カルシウムや食物繊維などの栄養素は、亜鉛の吸収を妨げるおそれがあるとされています。
ポリリン酸やフィチン酸といった食品添加物も、亜鉛の吸収を阻害する可能性があります。食品添加物はインスタント食品をはじめとする加工品に含まれていることが多いので、普段から好んで食べている方は気を付けましょう。
お酒をよく飲む方も、知らないうちに亜鉛不足に陥っているかもしれません。体内でアルコールを代謝する過程で亜鉛が使われてしまうため、お酒を飲む機会が多い方は、亜鉛が十分に摂取できていない可能性があります。
亜鉛の摂り過ぎに注意する
亜鉛を過剰摂取すると吐き気や嘔吐といった消化器症状や貧血、免疫力低下などが現れることもあります。
厚生労働省によると、亜鉛の1日あたりの推奨摂取量は、18~74歳の男性で約11mg、18~74歳の女性で8mgです。栄養素には「耐用上限量」が設けられているものもあり、亜鉛は18~74歳の男性で40~45mg、18~74歳の女性で35mgとされています。
耐用上限量とは、健康障害が起きるリスクがないとみなされる栄養素の上限摂取量のことです。設定された量を超えて摂取すると、体に良くない影響が出るおそれがあるため、亜鉛の摂り過ぎには十分注意しましょう。
亜鉛を過剰に摂取したからといって、薄毛や髪質が改善されるわけではありません。適切な量を効率良く摂取することが重要です。
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
まとめ
亜鉛は髪に含まれるケラチンというタンパク質の生合成に深く関わっている栄養素です。ほかにも育毛サイクルの正常化やAGA予防の効果も期待できるとされ、ヘアケアに力を入れたいなら積極的に摂っていきたい栄養素といえます。
ただし、亜鉛を摂れば摂るほど良いわけではありません。亜鉛を多く含む食品を適切に取り入れつつ、バランスの良い食事を心がけましょう。