日比野佐和子医師に教えてもらう【結局のところエイジングケアで一番大切なこと】

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エイジングケアという言葉が浸透し、効果的とされるサプリメントや美容方法がさまざまなメディアを通して発信されています。ただ、あまりにも情報が多く、「何が正解なのかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、エイジングケアの第一人者である日比野先生に、エイジングケアで大切にすべきことについて詳しくお聞きしました。

*エイジングケア:年齢に応じたお手入れ

日比野佐和子医師

日比野佐和子(ひびの・さわこ)

医師・医学博士 / 内科医、皮膚科医、眼科医、日本抗加齢医学会専門医 / 日本再生医療学会認定医 /
医療法人社団康梓会 Y’s サイエンスクリニック広尾 統括院長 / SAWAKO CLINIC×YS 統括院長 /
日本化粧医療学准会 理事長 / NPO法人国際医科学研究会 理事長 /
大阪大学医学系研究科 未来医療学寄附講座 特任准教授

再生医療・アンチエイジングの第一人者として、基礎研究から最新の再生医療の臨床にいたるまで幅広く国際的に活躍するほか、テレビや雑誌などにも数多く出演。真摯なカウンセリングで、多くのスポーツ選手や著名人にも信頼されている。著書に『幹細胞 活性化で若返り! 夢をかなえる5つの方法とは』(講談社)、『オトナ女子の「美肌」づくり百科』(ぴあ)、『最新医学で証明された最高の食事術』(講談社)、『つまり、結局何したら免疫力って上がるの?』(アントレックス)、『医者が教える すごい美肌循環』(アンノーン)など多数

エイジングケアでもっとも大切なのは、生活習慣の質を高めること

日比野先生はじめまして。今回はエイジングケアについていろいろと聞かせてください。まず、エイジングケアでもっとも大切なことは何なのか?先生の見解を教えてください。

エイジングケアにお悩みの方にまず知ってほしいのは「美肌は1日にしてならず」という言葉です。
よく、「すぐに効果が出るエイジングケアは?」「即効性のある美容治療や美容アイテムは?」と聞かれることがあるのですが、そのような即効性のある治療方法やアイテムはないと思っています。
もちろん、治療を行うことで短期的に効果が出ることはあるのですが、1度きりのケアは持続性が乏しく、時間が経つと元に戻ってしまうことがほとんどです。
エイジングケアは短期的なものではなく、長期的に取り組むものという意識を持ってほしいですね。

即効性を謳う治療方法や美容アイテムが魅力的に見えてしまうのですが、やはりそんなに簡単ではないですよね……。
長期的な取り組みが必要ということなのですが、具体的には何をすればよいのでしょう?

健康的な食事の画像

食事・運動・睡眠・洗顔・肌ケアなど、生活習慣の質を高めることを意識してほしいです。
というのも、肌の老化は複数の因子が組み合わさって起こる現象です。
脳腸皮膚相関(のうちょうひふそうかん※)という言葉があるように、不規則な生活習慣によって腸内環境が悪化したりストレスが蓄積したりすると、その結果として肌荒れや老化が発生するのです。
つまり、どれだけ外側からのケアに時間とお金をかけても、不規則な生活習慣がそのままでは、肌の老化は改善されないということです。
特定の何かに取り組めばよいのではなく、生活習慣全般の質を高め、内側から健康になることが美肌への近道といえるでしょう。

(※)脳腸皮膚相関
脳、腸、皮膚の間で情報が交換され、相互に影響を及ぼし合う関係性のことを指します。
この関係性は一方通行ではなく、双方向からの情報のやり取りが行われているという点が特に注目されています。

ありがとうございます。生活習慣の質を高めることの重要性がよくわかりました。
ちなみに、質の高い生活習慣とは何を指すのでしょう?良い習慣・悪い習慣を判断する基準のようなものはありますか?

肌が老化する直接的な原因は、酸化・糖化による炎症だとされています。
そのため、「肌に良い習慣=酸化や糖化を起こさないもの」「肌に悪い習慣=酸化や糖化を起こすもの」と考えることができます。
自身の生活の中から、酸化や糖化につながる習慣を見つけ出し、それを断つ努力をすること。
そして、肌に良い習慣を新しく取り入れること。この2つがエイジングケアを上手に行うポイントになると思います。

生活習慣に取り入れたいエイジングケアのポイントは

では、ここから日比野先生が実践している生活習慣について具体的にお聞きしていきます。食事・運動・睡眠・ストレスケア・肌ケアなどで先生が意識しているのはどんなことですか?

私がもっとも大切にしているのは食事です。
肌は食べたものの影響を受けやすく、腸内環境や睡眠の質、ストレスなどの精神面にも大きく関わっています。
また、酸化・糖化の原因にもなるため、良いものだけを摂り、悪いものは摂らないことを意識しています。

食べ物と腸内環境の関わりはイメージできるのですが、睡眠の質やストレスとも関係があるのは知りませんでした。
睡眠・ストレスとの関連性についてもう少し教えていただけますか?

睡眠をとる女性の画像

睡眠ホルモンといわれている「メラトニン」は脳内でセロトニンから合成され、この「セロトニン」は95%が腸内で作られています。
腸内環境の悪化につながる食生活を続けていると、腸の働きが悪くなり、これらのホルモンの分泌にも悪影響を与えてしまいます。
食生活を改善して腸内環境を整えれば、ホルモンの分泌が促進され、睡眠の質やストレスケアに良い影響を与えることができるのです。

なるほど……。健康や美容に食が重要なのはなんとなく理解していましたが、予想以上でした。
では具体的に、どのような食生活がエイジングケアに効果的なのでしょう?最低限押さえておきたいポイントはありますか?

野菜など食べ物の画像

私が食生活で意識しているのは以下の3つのポイントです。

●オメガ3脂肪酸を摂る
油は悪いものというイメージの方もいるかもしれませんが、油は生命の維持に欠かせない成分です。
大切なのは、良い油と悪い油を知り良質の油を積極的に摂ること。おすすめは、エイジングケアに効果的な亜麻仁油やえごま油などのオメガ3脂肪酸を多く含む油です。
オメガ3脂肪酸は体内でつくることができず、意識しないと食事でもなかなか摂取できないため、私は毎日生で摂るようにしています。
ちなみに、トランス脂肪酸が多く含まれているショートニングやマーガリンが悪い油の例となります。

●食事で腸内環境を整える
肌が美しくなる食事の基本は、腸内環境を整える食生活です。
先ほどもご紹介したように、腸内環境の悪化は心身にさまざまな悪影響を及ぼします。
また、体に必要な栄養素の吸収が悪くなるというデメリットもあります。
健康的な腸内環境とされるのは、「善玉菌2:日和見菌7:悪玉菌1(※)」のバランスです。
悪玉菌が増えると腸内環境が悪化するため、食事で善玉菌を積極的に摂るように意識しましょう。

(※)腸内細菌のバランスについて
腸内細菌のバランスは人によって個人差があることがわかってきています。善玉菌優勢が好ましいのは変わりませんが、最近では多種多様な菌を摂取することが推奨されています。

●6大栄養素をバランスよく摂取する
たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル・食物繊維の6大栄養素は、すべてが美肌作りに欠かせない栄養素です。毎日の食事でこれらの栄養素をバランスよく摂取することを意識しましょう。
しかし、栄養素の摂りすぎは健康障害につながることもあるため、一度にたくさん摂らず、いろいろなものを少しずつ、こまめに摂ることが大切です。
なお、炭水化物や脂質などの特定の栄養素をカットする食事法は、栄養素の不足につながります。肌荒れや乾燥肌、老化の原因になるため、おすすめできません。

ありがとうございます。エイジングケアに効果的な食生活について理解できました。
この他、先生が大切にされている習慣ってありますか?もしあれば教えてください。

生活習慣に運動を取り入れることも大切です。おすすめは、ウォーキングなどの有酸素運動ですね。
毎日1時間程度行うのが理想ですが、難しい方は1日15分程度でも大丈夫です。
1週間で合計50分以上を目安に運動を習慣化しましょう。

また、加齢にともなって筋肉が落ちたり硬くなったりするため、ストレッチで使わない筋肉を動かすことも大切です。お風呂上りや寝る前など、できる範囲でストレッチを日常に取り入れてみてください。

洗顔や肌ケアなどではどうでしょうか?注意すべきポイントがあれば教えてください。

洗顔や化粧水・乳液などの外側からのケアももちろん大切です。
ただ、健康状態が悪化していると、どれだけ外側からのケアに時間とお金をかけても肌の状態はなかなか好転しません。内側からのケアをすることで、インナーケアとアウターケアの相乗効果が得られるため、アウターケアも重要視しつつ、今回ご紹介したような生活習慣の質を高めることに力を入れてみてください。

また、ついつい見逃してしまいがちなのが頭皮の地肌ケアです。よくよく考えるとわかると思うのですが、頭皮の地肌と顔の肌はつながっており、地肌の環境が悪化すると肌にも悪影響を及ぼします。これまであまり意識してこなかったという方は、ぜひ地肌ケアの見直しにもチャレンジしてほしいです。

怠りがちな「地肌ケア」の重要性とポイントは?

「地肌の環境が悪化すると肌にも悪影響がある」というのは盲点でした……。
たしかに地肌も顔もつながっているので、肌ケアと同様に地肌ケアも大切にすべきですよね。ちなみに、肌と地肌で違いのようなものはあるのでしょうか?

頭皮の画像

地肌と肌の一番の違いは、皮脂の分泌量です。地肌は髪が生えてくる場所なので、肌に比べて皮脂の分泌量が多く、とても汚れやすい場所。
汚れをしっかり落とさないと地肌が悪化していくのはもちろん、ニオイの原因になることもあります。

また、表面が硬くなりやすいというのも地肌の特徴です。加齢とともにコラーゲンなどを生み出す皮膚の層が薄くなっていく他、血管も細くなっていくため血行不良になり、栄養素の供給が滞りがちになります。
もちろん肌でも同じ現象が起こっているのですが、手入れが行き届きにくい分、地肌の方が硬くなりやすいといえます。

なるほど。さらに、地肌が硬くなると肌にもその影響があるということですよね?

そのとおりです。地肌が硬くなると栄養がさらに行き届かなくなり、ハリや弾力が失われ、顔や首のたるみを引き起こしてしまいます。
地肌と肌は別物のように感じてしまいますが、皮膚や筋肉でつながっており、互いに連動しあっているのです。
今回ご紹介した内容に合わせて地肌ケアも取り入れることで、エイジングケアの効果をさらに高めることができると思います。

地肌ケアの重要性が理解できました。先生のお話から「硬さ」が地肌の危険信号なのでは?
と感じたのですが、地肌の硬さや健康状態をチェックする方法はあるのでしょうか?

地肌の硬さをチェックする方法としては「おさるポーズ」がおすすめです。
以下のイラストを参考に、自身で硬さをチェックしてみてください。
頭頂部がほとんどつまめない場合は、地肌が硬くなりこわばっているサインで、耳の上が柔らかくてつまめる場合は地肌がたるみ始めているサインです。

おさるポーズのイメージ画像

健康状態は、地肌の色で判断できます。
青(健康)・黄(注意)・赤(危険)を目安に、ご自身の地肌の健康状態を確認しましょう。
黄や赤の場合は地肌環境の悪化が考えられるため、何かしらのケアを行ってみてください。

スカルプケアブック

これなら誰でもすぐにチェックできそうですね。「地肌が硬かったり黄色や赤色だったりした場合は地肌ケアを」とのことですが、おすすめの地肌ケアはありますか?

基本的には先ほどご紹介した生活習慣の質を高める方法で大丈夫です。
肌と地肌のエイジングケアとして、ぜひ取り入れてみてください。

あとは、地肌の汚れをしっかり落とすことを意識しましょう。
シャンプーというと髪の洗浄というイメージをお持ちの方が多いと思うのですが、大切なのは地肌の汚れを落とすことです。
シャンプーをする際は、地肌8割・髪2割を目安にしてみてください。洗うときは、指の腹を使って優しくマッサージするように汚れを落としましょう。地肌を傷つけてしまうため、爪は絶対に立てないように注意してください。

併せて、地肌用の美容液を活用するとより効果的です。
お肌のケアと同じ感覚で、地肌もしっかりいたわるようにしましょう。なお、シャンプーや美容液などの地肌ケアのアイテムは、肌質に合わせて選ぶことが大切です。
以下の記事で肌質に合わせたおすすめの成分などを紹介しているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

※写真・イラストはイメージです。

まとめ

エイジングケアでもっとも大切なことは、生活習慣の質を高めることです。
生活習慣を見直し、食事や睡眠、運動によって心身を健康にすることで、肌の状態が改善し老化スピードも穏やかになっていきます。
エイジングケアの正解がわからない……という方は、日比野先生の「美肌は1日にしてならず」という言葉を心に、ぜひ今回ご紹介したポイントを生活習慣に取り入れてみてください。
また、併せて地肌ケアにもチャレンジしましょう。

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