夏こそ頭皮ケアが大切。皮脂の蓄積が引き起こす薄毛・抜け毛・ニオイのトラブル

夏こそ頭皮ケアが大切。皮脂の蓄積が引き起こす薄毛・抜け毛・ニオイのトラブルの写真

フケ・かゆみ・ニオイ・抜け毛など、夏場は頭皮トラブルが起こりやすい季節のひとつです。これらのトラブルはなぜ発生するのでしょうか?また、予防のためにはどのようなケアが必要なのでしょうか?

そこで今回は、エイジングケアの第一人者である日比野佐和子先生にインタビューを実施。
夏場に発生する頭皮トラブルの原因や適切な頭皮ケアについて詳しくお聞きしました。
頭皮トラブルにお悩みの方は、ぜひチェックしてみてください。

日比野佐和子医師

日比野佐和子(ひびの・さわこ)

医師・医学博士 / 内科医、皮膚科医、眼科医、日本抗加齢医学会専門医 / 日本再生医療学会認定医 /
医療法人社団康梓会 Y’s サイエンスクリニック広尾 統括院長 / SAWAKO CLINIC×YS 統括院長 /
日本化粧医療学准会 理事長 / NPO法人国際医科学研究会 理事長 /
大阪大学医学系研究科 未来医療学寄附講座 特任准教授

再生医療・アンチエイジングの第一人者として、基礎研究から最新の再生医療の臨床にいたるまで幅広く国際的に活躍するほか、テレビや雑誌などにも数多く出演。真摯なカウンセリングで、多くのスポーツ選手や著名人にも信頼されている。著書に『幹細胞 活性化で若返り! 夢をかなえる5つの方法とは』(講談社)、『オトナ女子の「美肌」づくり百科』(ぴあ)、『最新医学で証明された最高の食事術』(講談社)、『つまり、結局何したら免疫力って上がるの?』(アントレックス)、『医者が教える すごい美肌循環』(アンノーン)など多数

頭皮の健康に欠かせない!皮脂の役割は?

日比野先生、よろしくお願いします。今回は夏場の頭皮ケアについて色々とお聞きしたいのですが、まずは健康な頭皮とはどのような状態なのか教えてください。

頭皮の健康を考えるうえでまず知っておいてほしいのは、皮脂の役割です。
皮脂は頭皮の皮脂腺から分泌される成分で、天然の保湿剤のような役割を担っています。
代表的な皮脂の機能としては以下があります。

【皮脂の代表的な役割】
・角層の水分の蒸発を防ぐ
・外界からの異物の侵入を防ぐ

このように、皮脂が保湿剤とバリア機能を果たすことで、頭皮の健康状態を維持しています。
皮脂というと肌荒れやニオイの原因など、ネガティブなイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は頭皮の健康になくてはならない成分なのです。

なるほど。ただ、悪い方向にも作用することがあるのですよね?

そうですね。皮脂の分泌量が正常で、頭皮を清潔に保てていれば何も問題はありません。
ただ、過剰に分泌されたり必要以上に蓄積したりすると、フケ・かゆみ・ニオイなどの頭皮トラブルを招いてしまいます。
頭皮は皮脂の分泌がもっとも多い場所なので、このようなトラブルにつながりやすいといえるでしょう。
そのため、皮脂の過剰分泌や蓄積を予防することが、ニオイ予防の重要なポイントになります。

夏の頭皮トラブルの原因とは?

今回は夏の頭皮ケアがテーマなのですが、暑さによって皮脂の分泌が増えたり、蓄積しやすくなったりすることはあるのでしょうか?

暑さによって分泌量が増えるといったことはありません。
ただ、夏場が厄介なのは、汗と紫外線によって頭皮の環境が悪化しやすいということです。
毎日のケアを怠ると、フケ・かゆみ・ニオイなどのトラブルにつながりやすい他、蓄積したダメージによって秋や冬に抜け毛が多くなってしまいます。

なるほど。皮脂と汗と紫外線など、頭皮トラブルにつながる原因はいくつかあると思うのですが、それぞれがどのような問題を引き起こしているのかもう少し詳しく解説していただけますか?

頭皮のクレンジングが不十分または皮脂の過剰分泌によって、頭皮に皮脂が蓄積します。
蓄積した皮脂と汗が混ざることで酸化が進行し、乾燥やバリア機能の低下などのトラブルを引き起こします。
バリア機能が低下した状態で大量の紫外線を浴びると、頭皮がダイレクトにダメージを受けてしまい、さらに頭皮環境が悪化します。

これは負のルーティンですね……。ちなみに、頭皮のイヤなニオイも同じ原因で発生しているのでしょうか?

ニオイも頭皮環境の悪化が根本にありますが、その他にも以下のような原因が考えられます。

【頭皮のニオイの原因】
・蓄積した皮脂が酸化することでニオイが発生する(※40代以降は加齢臭の原因にも)
・頭皮の雑菌が繁殖することでニオイが発生する
・汗と皮脂が混ざったものを常在菌が分解することでニオイが発生する

頭皮は手のひら・足の裏に次いで3番目に汗腺が多い場所でもあります。
汗自体にニオイはないのですが、皮脂や常在菌と混ざることでニオイの原因になります。
夏場は特に汗が多い季節なので、ニオイが発生する条件が整いやすいのです。

皮脂の分泌や汗を止めることはできないので、ニオイを予防するのはなかなか難しそうです。先生からみて、どのような予防方法が考えられるのでしょうか?

野菜など食べ物の画像

大切なのは、皮脂の過剰分泌と蓄積を防ぎ、頭皮を清潔に保つことです。
エイジングケア*の記事でもご紹介したように、食生活の改善と適切な頭皮ケアの2つがポイントになります。
この2つをしっかり行うことで、ニオイをはじめ、さまざまな頭皮トラブルを解消することができるはずです。

*年齢に応じたお手入れ

夏の頭皮ケア①:頭皮環境を整える食生活とは?

それでは、夏の頭皮ケアの具体的な方法について教えてください。まずは、食生活の方からお聞きしたいのですが、どのようなことを意識すればよいのでしょう?

食生活では、頭皮環境の悪化につながる食品の摂取を控え、頭皮環境を整える成分を積極的に摂取することが大切です。それぞれについてご紹介していきますね。

●摂りすぎに注意する成分(動物性の脂質・糖質・カフェイン) 

ご飯やパンなどの画像

まずは、動物性の脂質や酸化した油を摂りすぎないように注意しましょう。これらの脂質を摂りすぎると、皮膚ガスという皮膚から排出されるガスのニオイや、頭皮にもさまざまな悪影響を及ぼします。また、加齢臭の原因のひとつである、過酸化脂質の生成を促進するというデメリットもあります。

次に摂りすぎに注意したいのは糖質です。糖質を摂りすぎると血糖値が急激に上昇し、肌の糖化を進行させてしまいます。炭水化物はそばや全粒粉のパンなどから摂るようにして、糖質が多い白米やうどんの量を抑えましょう。
また、カフェインの摂りすぎにも注意が必要です。カフェインには交感神経を刺激する効果があり、摂りすぎすると皮脂の分泌を促進してしまいます。毎日コーヒーを何杯も飲むという方は飲む量を抑えましょう。

●積極的に摂取したい成分(抗酸化成分・不飽和脂肪酸「オメガ3」・たんぱく質)
皮脂や肌の酸化を抑える抗酸化成分を積極的に摂取しましょう。抗酸化成分はトマト・ホウレンソウ・ピーマン・ブロッコリーなどの緑黄色野菜や柑橘類・キウイ・イチゴなどの果物に多く含まれています。
できる限り、毎食摂取するようにしましょう。

不飽和脂肪酸も積極的に摂取したい成分のひとつです。特におすすめは、肌にうるおいを与えたり細胞の生成を促したり、さまざまな美容効果があると言われているオメガ3という油です。亜麻仁油・えごま油・シャケ・青魚・ナッツ類など、オメガ3を多く含む食材を積極的に摂取してください。

この他、肌の材料になるたんぱく質も摂取しましょう。動物性脂質の摂りすぎに注意したいため、脂質の少ない卵や鳥の胸肉の他、大豆などの植物性たんぱく質をメインに摂取するようにしてみてください。

ありがとうございます。どれもすぐに実践できそうなことばかりで安心しました。この他、食生活で意識すべきことはありますか?

先ほどもご紹介したように、血糖値を急激に上昇させるような食事は控えたほうが良いと思います。
空腹の状態で甘い物を食べたり、炭水化物から食事をはじめたりすると血糖値が上がりやすいので、「空腹時は糖質の少ないものを」「最初はサラダなどの野菜から」など、食事の仕方に注意しましょう。
また、水分が不足するとトラブルが発生しやすいので、こまめに水分補給することも忘れないようにしましょう。

夏の頭皮ケア②:頭皮にも肌と同じような丁寧なケアを

次に、日々の頭皮ケアについて聞かせてください。どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか?

髪を洗っている画像

大切なのは、トラブルの原因となる皮脂や汚れをしっかり落とすことです。
指の腹を使って頭皮全体を揉み込むように洗い、頭皮をキレイにクレンジングしましょう。
洗い方のコツは、頭皮8割・髪2割を意識すること。
髪ではなく、頭皮をメインに洗うように意識を変えてみてください。なお、頭皮のダメージにつながるため、爪は絶対に立てないようにしましょう。

肌質に合わせてシャンプーやトリートメントなどのケアアイテムを選ぶことも重要なのかな?と思うのですが、ケアアイテムを選ぶ基準のようなものはありますか?

肌質は「乾燥肌・脂性肌・混合肌」の3種類に分けられます。それぞれのケア方法とおすすめの成分についてご紹介するので、以下を参考にしてみてください。

●乾燥肌

スカルプケアブック


皮脂分泌が少なく、乾燥しやすい肌質です。肌のバリア機能が低下し、かゆみを感じやすいのが特徴。乾いたフケが出たり、ピリピリとした刺激を感じたりしやすい傾向があります。

乾燥肌のケア
角質細胞を強くするインボルクリンへのアプローチやバリア機能を正常化し保湿することが大切です。
インボルクリンを増やす「セージエキス」やバリア機能をサポートする「ユズセラミド」などの成分がおすすめ。

●脂性肌

スカルプケアブック


毛穴が大きく皮脂分泌が多いのが特徴です。ベタつきやすく、オイリーなフケや脂っぽいニオイが発生しやすくなります。

脂性肌のケア
皮脂の分泌と酸化を抑えることが大切です。
イソフラボンを多く含み皮脂分泌を抑制する「ダイズエキス」や悪臭を除去する「カキタンニン」などの成分がおすすめです。

●混合肌

スカルプケアブック

場所によって乾燥とベタつきが両方見られる肌質です。インナードライ肌とも呼ばれ、肌内部の水不足によって皮脂が過剰に分泌されている可能性があります。乾燥肌と脂性肌、両方のトラブルを感じやすいのも特徴です。

混合肌のケア
インナードライの改善のために、肌の内部と外部の両方から保湿することが大切です。
低分子で肌内部に浸透する「加水分解ヒアルロン酸」や肌表面の保水性を高める「ヒアルロン酸ナトリウム(2)」などの成分がおすすめです。

肌質に合わせて成分を選び、日々のケアに取り入れることで、頭皮環境を整えることができます。
ニオイやかゆみの解消はもちろん、秋冬に発生する抜け毛の予防にもなるため、「これまであまりこだわってこなかった」という方はぜひ試してみてください。

ありがとうございます!最後に、シャンプーの仕方やタイミングの他、夏場の頭皮ケアで覚えておいてほしいことがあれば教えてください。

たまに、シャンプーは朝にするという方がいますが、寝ている間に皮脂の蓄積や酸化が進行しやすいため、あまりおすすめできません。
シャンプーでしっかりクレンジングし、美容液やトリートメントで頭皮をケアしてから就寝するようにしましょう。どうしても朝に入りたいという場合は、シャンプーとケアは夜に行い、朝はお湯で流すだけにしてください。

また、今回は十分に説明することができませんでしたが、睡眠不足やストレスも皮脂の過剰分泌の原因になります。質の良い睡眠をとることやストレスを解消することも重要なので、食生活やケアの改善と合わせて取り組んでみてください。

まとめ

フケ・かゆみ・ニオイ・抜け毛などの頭皮トラブルは、皮脂の蓄積や汗、紫外線などによる頭皮の酸化を進行させ、さまざまな要因が重なって引き起こされます。夏場はこのような頭皮トラブルが発生しやすい季節のため、できればその前にしっかり予防をしておきたいところ。気になる症状の経験がある方は、ぜひ今回ご紹介した頭皮ケアを試してみてください。

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