髪と頭皮の基礎理論ケミカル講座 vol.1 パーマのしくみ・基礎知識(1)

まずは、毛髪の4つの結合を理解しておきましょう

毛髪の4つの結合

① ペプチド結合
アミノ酸の基本的な結合。過度のアルカリ剤、過酸化水素で加水分解されて切断します。

② シスチン(S-S)結合
システイン2分子が結合したもの。1剤の還元剤によって切断され、2剤の酸化剤で再結合してS-S結合に戻ります。

③ イオン結合
-(マイナス)イオンと、+(プラス)イオンの結合。髪の健康な状態は、イオン結合がしっかり結合しているpHが弱酸性(pH4.5~5.5)の状態(=等電帯)。髪のpHがアルカリ性に傾くと、イオン結合が切断されます。

※-イオンになるアミノ酸…グルタミン酸、アスパラギン酸(酸性アミノ酸)
+イオンになるアミノ酸…アルギニン、リジン(塩基性アミノ酸)

④水素結合
水に濡れると切断。乾かすことで再結合します。

4つの結合とパーマのかかるしくみ

パーマ剤の反応プロセスと4つの結合は深い関係があります。
4つの結合のうち3つの結合を切断し、美容技術の中で最も効率的に髪を軟化させる薬剤がパーマ1剤です。

  • 水素結合 ←薬剤塗布で切断
  • イオン結合 ←パーマ剤がアルカリ性なので髪のpHもアルカリ性に傾くことによって切断
  • S-S結合 ←1剤の還元作用で切断

※すべてのシスチン結合が切断されるわけではなく、強いパーマ剤でも髪のシスチン結合の約20%しか実際には切断されていません。

パーマ2剤の酸化剤で戻せるのは、シスチン(S-S)結合だけです。pHを等電帯(pH4.5~5.5)にし、髪を乾かすことで、イオン結合と水素結合が元に戻ります。
ウェーブはこの3つの結合で作られているので、パーマ処理においては、3つの結合をしっかりと戻すことが重要です。
これができていないと、弾力の低下と間充物質の溶出によりウェーブ形状の固定化ができず、パーマがとれやすくなります。さらに、髪の強度低下、水分量低下にもつながります。

パーマのかかるしくみ

パーマ剤の分類

パーマ剤の目的とは“毛髪にウェーブをもたせ、保つ” “くせ毛、縮毛又はウェーブ毛髪を伸ばし、保つ”ことです。

上記の効能、効果が薬事法で定められており、還元、酸化の化学反応を伴うことから、人体の安全性を確保するために、パーマ剤は医薬部外品となっています。
パーマ剤はパーマネント・ウェーブ用製造(輸入)承認基準により、パーマネントウェーブ品質規格が薬事法で定められており、大きくはパーマネントウェーブ剤と縮毛矯正剤に分類されています。

パーマネントウェーブ剤は、有効成分(チオグリコール酸塩類、システイン類)、形態(二浴式、一浴式、用時調整二浴式)、使用方法(コールド式、加温式)により、6つのカテゴリーに区分されます。
一般的に使用されるパーマネントウェーブ剤のコールド二浴式と加温二浴式の違いをみてみると、加温式では、60℃以下であれば加温してもかまいませんが、加温されることによる毛髪のダメージを考慮して、還元剤の濃度、アルカリ度、pHの上限がコールド式よりも低く設定されています。

パーマネントウェーブ用剤-コールド式と加温式の規格

1剤 チオグリコール酸 システイン
コールド式 加温式 コールド式 加温式
温度 室温(1~30℃) 60℃以下 室温(1~30℃) 60℃以下
*還元剤濃度 2.0~11.0% 1.0~5.0% 3.0~7.5% 1.5~5.5%
アルカリ度 7ml以下 5ml以下 12ml以下 9ml以下
pH 4.5~9.6 4.5~9.3 8.0~9.5 4.0~9.5

(*チオグリコール酸の濃度が7.0%以上のときには、越えた%分ジチオジグリコール酸を必ず配合すること)

2剤 臭素酸ナトリウム 過酸化水素
コールド式 加温式 コールド式 加温式
酸化力 3.5以上 3.5以上 0.8~3.0
(過酸化水素濃度)
(2.5%以下)
0.8~3.0
(過酸化水素濃度)
(2.5%以下)
pH 4.0~10.5 4.0~10.5 2.5~4.5 2.5~4.5

その他よく聞く薬剤の分類

ストレートパーマ剤(縮毛矯正剤)

チオグリコール酸を有効成分としたもので、コールド式(室温施術)、加温式(60℃以下での施術)、アイロンを使用できるかどうかにより以下の4つのカテゴリーに区分されています。

  • チオ系コールド二浴式用縮毛矯正剤
  • チオ系加温二浴式用縮毛矯正剤
  • チオ系コールド二浴式用縮毛矯正剤(アイロン使用可)
  • チオ系加温二浴式用縮毛矯正剤(アイロン使用可)

サルファイト系カーリング料

亜硫酸塩を有効成分としたカーリング料。パーマ剤と同様に還元の化学作用を伴いますが、安全性が高く、化粧品に分類されています。
その他、よく聞くシステアミンも化粧品に分類のカーリング剤です。