なぜパーマで褪色するのか?
ヘアカラーの発色の仕組みとパーマの1剤の還元作用が関係しています。ヘアカラーは、1剤に含まれる酸化染料と2剤に含まれ「酸化作用」をもつ過酸化水素が反応し、酸化重合することで発色しています。
しかし、パーマの1剤には酸化作用の反対の「還元作用」があります。そのため、毛髪内部で酸化重合している染料の結合をパーマの1剤の還元作用で切ってしまうことで、染料の粒子が小さくなり消色し、溶出していきます。
また、パーマ施術中は1剤に配合されているアルカリの影響で、毛髪が膨潤し、キューティクルが開いた状態となっており、染料が溶出しやすくなっています。
このようにパーマの1剤によって結合を切られた染料の粒子が毛髪内部から溶出してしまうため、ヘアカラーが褪色してしまいます。
パーマ剤で褪色しやすい色味は?
ヘアカラー剤に配合されている酸化染料は、(1)直接染料、(2)中間体、(3)カプラーの3つのタイプに分類され、それらを組み合わせて色味がつくられています。パーマによる褪色は、染料の酸化重合したときの大きさと毛髪への浸透性が大きく影響しています。
※特にアッシュ系、マット系や一部の赤系は、中間体とカプラーで結合している数が少ない状態で発色しているため、パーマの1剤の還元作用で壊されやすく、褪色しやすい色調です。
パーマ剤による褪色を防ぐためには
パーマによる褪色を抑えるためには、1剤・2剤の選定、施術方法がポイントとなります。褪色は還元剤やアルカリ剤の種類にも大きく関係します。シス系のパーマ剤よりもチオ系のパーマ剤のほうが褪色が大きい傾向があります。アルカリ剤はアンモニアよりもモノエタノールアミンの方が褪色が大きい傾向があります。また、1剤のpHは高くなる方が褪色・変色が少ない傾向にあります。これはヘアカラー剤のpH(アルカリカラー pH9.5以上)に近くなるほど、発色が安定するためと考えられています。
2剤の選定について
2剤においては、臭素酸系よりも過酸化水素系のほうが褪色は少ない傾向にあります。ヘアカラーの2剤には、過酸化水素が使用されており、臭素酸は使用されていません。穏やかな酸化力の臭素酸では、パーマ1剤で還元されて切れてしまった染料を再度、酸化重合させて発色させることができないからです。一方、強い酸化力を持つ過酸化水素は、還元されてしまった染料を再び発色させることができます。 このように、同じ1剤を使用しても、2剤の選定によって褪色の度合いに大きな差が出ます。
施術方法について
薬剤選定だけでなく、施術方法もヘアカラーの褪色に影響します。 褪色を抑えるための施術上のポイントを確認しましょう。
(1) つけ巻きの場合、できるだけ早くワインディングする。(時間差によるムラをなくす)
(2) 必要以上に長い時間、髪を薬剤に浸さない。(オーバータイムをしない)
(3) 1剤の薬剤が流れ落ちないように塗布量を調整する。
(4) 2剤をムラなく塗布する。
特に2剤塗布の際には注意が必要です。 髪がロッドに巻かれている状態では、毛先が内部に重なっているため2剤の浸透に差が出て、薬剤が均一に作用していないということが起きます。 特に、過酸化水素系を使用すると、薬剤が作用した部分は色が戻りますが、薬剤の作用が弱い部分では色が褪色したままとなり、塗布ムラがそのまま色ムラになってしまいます。
酸化染料が発色されていないということは、S-S結合も元に戻っていないということです。そのため褪色ならびにダメージを抑えるためには、ロッドアウト後のすすぎの前に、再度2剤を塗布することが必要です。ぜひ、実践してみてください。
※パーマで褪色してしまった髪に、トナーで失った色味を補給するメニューもあります。髪のダメージ、ウェーブのダレを抑えるためにpHがより低い弱酸性のヘアカラーを使用することをおすすめします。